医療短大・各病院だより

付属病院の現場から

医学部付属の各病院に勤務する同窓会員を紹介します

東海大学医学部付属病院、同東京病院、同大磯病院、同八王子病院で働く同窓会員にインタビューしました。笑ったり泣いたり、仲間たちの奮闘にエールをお願いします。同窓会員からのメッセージです(インタビュー:2020年度)。

 

人を成長させる「看護」という仕事

医学部付属病院 横田弘子さん(副院長・看護部長)

最も印象に残っている学生時代の思い出は、1年生の後半に初めて臨んだ基礎実習。担当したのは特別病棟で療養中の、半身不随の男性でした。学術分野で数多くの功績を残してきた気骨ある老紳士。初日にあいさつすると、「何もできない人はじゃま。来なくていい」と一喝され、以後、何もさせてもらえません。

指導教員の山根信子先生から、「患者さんの一日をよく振り返ってみて」と問いかけられ、何ができるかを考え続けて最終日。勇気を出して、「食事の前に手を洗いましょうか」と声をかけると、驚いた様子でしたが拒否はせず、車イスで洗面所に向かい、手洗いの介助をさせてもらえたのです。

それを機に患者さんはいろいろな話を聞かせてくれて、最後には「頑張ってよい看護師さんになって」と励ましてくれました。患者さんの視点に立ち、必要なケアを必要なときにすれば心を開いてもらえる。そう気づいたとき、「看護師になる」と覚悟が決まりました。

今は病院経営の視点が求められる役職に就いていますが、最初の基礎実習での出来事は常に自分の原点。看護師として培った経験を発信し、よりよい病院づくりに生かしていきたいと考えています。卒業して約40年。看護は人を成長させてくれる仕事だとあらためて感じる日々です。

 

仲間の支えで新型コロナに立ち向かう

医学部付属東京病院 鈴木秀美さん(看護部長)

東京病院が都の依頼を受けて新型コロナウイルス感染症患者の受け入れを開始したのは7月のこと。看護師全員を対象に陽性患者の対応についてアンケート調査をしましたが、「絶対に対応できない」と回答した人はゼロでした。各自が看護師としての責務を果たそうと真摯に考えてくれたのだと思います。

看護部でも速やかに対策チームを編成し、2人の感染管理認定看護師を中心に感染対策の教育と実践をスタート。病棟の改修工事で入院患者が不在のときも、防護服の着脱訓練や感染対策をはじめとする各種マニュアルの見直し、重症化した際のシミュレーション、英語圏以外の外国人患者に対応するための説明用紙の作成などに取り組みました。

手術がなくなったオペ室の看護師は、防護服やマスク、ゴーグルを手作りするなど、それぞれが知恵を絞り、「今、何をすべきか、何ができるか」を考えて準備にあたってくれました。

さりげなく見守り合っている医療短大の同期からも力をもらっています。LINEでつながる仲間たちの近況報告を読むと、「頑張らなくちゃ」と勇気がわいてきます。同期や病院スタッフに支えられる日々。「出会った仲間が、きっと助けてくれる」という元上司の言葉をかみしめています。

 

医療短大で学んだ「思想を培う」大切さ

医学部付属大磯病院 石山圭子さん(看護部次長)

第二看護学科での2年間は、とにかく青春を謳歌しました。飛鴎祭実行委員としてイベントを企画したり、東海大学の学生とバンドを組んで歌ったり……。准看護士の資格を生かし、スクーターで片道1時間かかる産婦人科クリニックでのアルバイトも続けました。勉学にも好きなことにも思いきり取り組んだ、充実した学生時代でした。

就職した付属病院で出会った医師と結婚しましたが、開業を目指して準備を始めていた矢先に夫が病死。夫との思い出を封印し、親の援助を受けずに看護師を続けながら、生まれたばかりの娘と二人三脚で歩む道を選択しました。

娘が、「お母さんはいつもはつらつとして楽しそう。だから私も看護師になる」と言ってくれたときは、本当にうれしかった。娘が自分の道を見つけた今、ようやく「封印」を解いて夫と過ごした2年間を振り返り、泣いたり笑ったりできるようになりつつあります。

自分で自分の道を選び、後悔することなく日々を送ってきましたが、その礎となったのは、学園の創立者・松前重義先生の「現代文明論」の講義。人生の基盤となるものの見方や考え方を確立し、「思想を培う」大切さを学びました。医療短大は役目を終えますが、松前先生の思いは卒業生にずっと受け継がれていくと信じています。

 

内田先生の教えを引き継ぐ

医学部付属八王子病院 伊藤由美子さん(看護部長)

卒業して20年ほど経ったころ、同窓会の会長として戴帽式に出席するために訪れた湘南校舎のケヤキが太く大きくなっていることに感激。「ケヤキが年輪を重ねていくように成長し続けてほしい」と、式典で学生たちに語りかけました。それからさらに20年。医療短大もケヤキも、より進化していると感じています。

2012年に八王子病院の看護部長になって以来、『内田靖子教授業績集』を常に手元に置いています。初代学部長を務められた内田先生が医療短大を退任された1987年に出された研究論文集で、前任の看護部長から、「卒業生のあなたが持っているべき」と託されました。

掲載されているのは、「生命の尊厳と、深く人を愛し、人間性の尊重を根底に、科学と技術を習得した人材を育成する」という内田先生の教育目標と、それを具現化するために先生方が取り組んだ教育実践と考察です。自分たちが受けた教えの素晴らしさをかみしめるとともに、「科学とヒューマニズムの融合」「思いやり」「温かさ」といった付属4病院共通の理念を再確認しています。

内田先生の著書とともに、先生方が目指した看護師像を次世代に引き継ぐのが私たちの使命。ケヤキのように成長し、人々のために看護を充実・発展させていきたいと考えています。

 

東海大学医療技術短期大学同窓会事務局

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