英語の響きと西洋音楽に魅了され、意味も分からないままビートルズを口ずさむような小学生だった。中学2年の夏、初めて買ったレコードはサンタナの名盤『キャラバンサライ』。エアコンもない自宅の一室で、汗を流しながらラテンロックの豊潤なサウンドに酔いしれたのを覚えている。洋楽への憧憬はやがて留学願望へと形を変え、英語を猛勉強する原動力となった。そして80年代半ば、エンジニアとして大手メーカーに勤務していた私は、社内制度を活用してニューヨークに留学。コロンビア大学で最先端の人工知能を学びつつ、オフの日はマンハッタン・ビレッジで本場のジャズを堪能するという充実の日々を過ごした。むろん異国での生活は楽しいばかりではなく、価値観の違いに戸惑ったり、人種差別に心砕かれる日もあった。帰国後も、そして二度目のアメリカ留学を経てロボット分野の研究者となってからも、目の前には幾度となく高い壁が立ちはだかった。そんなとき一番の支えになってくれたのは音楽だ。幼少期から今に至るまで、人生のバックグラウンドには常に音楽が流れている。音楽は、時に私を突き動かし、時に心を癒してくれる、人生の伴走者だ。