コンパクトな軽量ボディに強力なエンジン、そしてスタイリッシュな外観。国産の本格スポーツカーとして多くの若者を魅了したフェアレディZは、私にとって青春の象徴だ。日産に勤務していた70〜80年代、独身寮の仲間の多くがこの名車を所有し、休日には何台もの「Z」を連ねて海沿いのドライブを楽しんだものだ。しかし、フェアレディZは経営効率の観点からは非効率だ。膨大なコストをかけて開発しても、大衆車のような量産は望めない。それでも当時の日産は若者に夢を与えるべく、手の届く価格帯でフェアレディZを世に出した。私はそんな経営姿勢を誇りに思いながら、同社で人事(ヒト)と商品企画(モノ)に携わった。このうち生涯を捧げるテーマに選んだのは「ヒト」の方だ。モノは突き詰めれば利便性や機能性に集約されがちだが、ヒトには無限の可能性があると考えたからだ。AIの時代を迎えた今でも、その考えは変わらない。この先AIがいかに進歩しても、フェアレディZのような、過去の延長線上にはない革新的なモノは生み出せないだろう。学生諸君にもぜひ、五感をフルに使って革新を創造する力を開花させてほしいと願っている。
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