
私は33年間の政府勤務のうち、約半分をサイバーセキュリティ政策や経済安全保障政策に捧げてきた。中でも思い出深いのは、2015年9月に閣議決定された日本初のサイバーセキュリティ戦略の取りまとめに、実務責任者として携わったことだ。戦略を書面化するにあたり重視したのは、具体的な固有名詞や細かな事項は盛り込まず、骨太で「なるほど」と思わせる内容にすること。これにより国内の誰が読んでも理解できる普遍性を確保するとともに、日本が自由主義国家として情報の自由な流通を重視する姿勢を明確に示した。本レポートはその成果物であり、海外で手土産代わりに配布することも考慮して、紙の質感や重さにまでこだわったものだ。大学で教鞭を執るようになった現在は、当時の経験を基に、学生に戦略的思考の重要性を説いている。グローバルで変革の激しい時代、確かな思想と戦略性を持って行動できる人材を育成することが、私の新たな使命だと考えている。